1-2 「腱引き」とは?

「腱引き」とは、日本で生まれ、日本で育った民間療法です。
しかし、今ではほとんど耳にしなくなっています。高齢の人ならば、腱引き、筋引きということばを知っているかも知れません。なぜ、日本で生まれた民間療法が姿を消してしまったのでしょうか。
「効果があまりなかったから? 」
いえ、いえ。まったくその逆です。
効果がありすぎて消えていってしまったのです。
戦国時代から江戸時代にかけて発達した武術の中で、柔術は甲冑を着けて、直接相手と組み合う武術として発達しました。昔の稽古は真剣勝負です。剣術にしても真剣は使わなかったものの、防具などない状態で木刀で打ち合っていました。
柔術も同じく、本気対本気、まさに真剣に稽古を行ったため、ケガも多く、中には命を落としてしまう人も少なくなかったようです。
「腱引き」は、柔術の稽古中に受けたダメージを直すために生まれたと聞いています。柔術から柔道が誕生し、それと共に柔道整復術は生まれました。現在で も、柔道整復師という資格があります。しかし、同じ柔術を源としながらも、「腱引き」は柔道整復術とはまったく異なっています。
柔道整復術は骨接ぎと呼ばれるように、柔道の技による骨折、脱臼、ねんざなど骨に対する治療を行うものが主であることに対して、「腱引き」は、筋肉に対して施術を行います。
江戸時代までは、武者修行の一環として集落を渡り歩く柔術家(腱引き屋)が数多くいたと思われます。「腱引き」の看板を上げて、そこの集落にいる人たちの肩こり腰痛を直して、お布施をもらって生きていました。
そして、一通り直すと、次の集落へと移動していきました。なぜなら、「腱引き」屋には、柔術の武者者修行の一環として行われていたので、一箇所に定着してはならないという鉄則があったようです。
「腱引き」の施術は、肩こり・腰痛なら一撃改善です。その場で改善してしまいます。
通常の整体、按摩、マッサージでは、通うことによって少しずつ直していきます、通院する患者がいればいるほど、生活は安定します。しかし、「腱引き」 は、一回か二回の治療でほとんどが完治してしまうため、生活の糧となる患者さんが周りからドンドンいなくなってしまったのです。
そのため、一箇所で施術院を持つことなく、日本各地を転々として施術を行っていたのです。私には二人の師匠いますが、師匠の施術を受けに来る人の範囲も、一人で関東一円をカバーするほど広いものでした。
しかし、明治以降、柔術の衰退と共に、柔術家としての生計が難しくなり、「腱引き屋」として地域に定着をするようになったようです。近隣の方で、腱引き屋に歩いて通える患者さんは、すぐに症状が改善されてしまうため、いなくなってしまいました。
生活に困った「腱引き」屋は廃業をせざるを得なくなり、次第に姿を消していってしまったのです。
「腱引き」の技術は、効果がなくて途絶えてしまったのではありません。効果があり過ぎたために、施術を受ける方が一人消え、二人消えと途絶えてしまったのです。
古式「腱引き」療法の一撃改善は文字通り、ギックリ腰であれば、ほんの5?10分位の施術で8割以上の人が改善してしまいます。 
私の開いている道場に平成20年に新規で来られた方は約200人。その内、ギックリ腰の方は120人位でしょうか。今年になってまだ通っている人は慢性 的な疾患をお持ちになっている10名足らずです。ギックリ腰の方は全員1回か2回で改善してしまったために、リピーターとしては存在しません。
当道場に通ってくるリピーターの方は、高齢者の方が圧倒的に多いですね。いくら筋整流法(古式腱引き)で調整しても、筋肉や腱(筋)に張力がなくなって、定位置に腱(筋)をきちんと納めても、時間が経てばゆるんでしまうので、定期的に通ってくるようになります。
慢性の症状を持っている人も同じです。一旦身についてしまっている筋肉の癖(位置)は、生活習慣によってなかなか抜けません。だから、施術後のその人に合った運動指導がとても大切です。
そして、スポーツ関係者の多くはリピーターになっています。これは現代に蘇った「腱引き」の重要な役割だと考えていますが、スポーツトレーナーの技術として、とても有効なものがあります。
アスリートは、身体のメンテナンスのために、定期的に来場してきますし、特に大会前には、ベストコンディションの筋肉位置に仕上げることが出来るからです。これについては、後ほどお話ししましょう。
そして、評判を聞き訪れる人は、私の道場のある富士市から遙か遠い、関西圏、関東圏からも多数来られます。
私自身、古式腱引きを知ったのは、人からの紹介でした。広告も、治療院の看板も作っていないにもかかわらず、古式腱引きの効果を聞き、訪れる人が絶えませんでした。
私が知る限り、伝承者は皆無といってもいい状態になった古式腱引きですが、この知識と技術は、予防医学、高齢化社会にとって欠かせない技術だと考えています。
筋整流法(古式腱引き)は十日間ほどの講習によって、基本的な施術手段や感覚は誰でも身につけられる技術です。


 

こちらのページは筋整流法創始者である小口昭宣による「筋整流法」「腱引き療法」の解説です。一問一答形式の「よくあるご質問」のページもありますので、そちらもご覧ください。